ファミリーコンステレーションで得られるもの(サマースクール体験記2)
(2019年8月10日 ブログ投稿)
サマースクールの体験記、続きです。
サマースクールと呼ばれているこのワークショップは、
毎年様々なテーマでセラピストやヒーラー自身の成長を促している合宿形式のワークショップで、
参加者の間では「セラピストの修行場」とも囁かれています。
私は2年前に初めて参加しましたが、
たくさんの気づきがあり、大きな刺激を受けました。
参加後に多くの変化も体験したことで、
「しっかり取り組めばとてもプラスになるワークショップ」
であることを実感していたのですが、
今年のテーマはファミリーコンステレーションだと知り、
もともとカウンセラーの養成講座で心理療法の一つとして学んだ時に興味のある療法だったので、参加することにしました。
ファミリーコンステレーションとは
ドイツ人の心理療法家であるバート・ヘリンガー氏が確立した家族療法のグループワークです。
日本語では「家族の座」とも呼ばれています。
家族療法という名になっていますが、人間関係全般についての療法です。
もちろん、職場などの人間関係から生じている悩みについても活用できます。
基本的には問題が何であれ、
人の悩みには必ず人間関係が関係していますので、
人や組織が抱える様々な問題に対して取り組みが可能です。
そもそも、人間関係の問題を紐解いていくと、
幼少期の家族関係で刷り込まれたパターンを踏襲している場合が多いのです。
根っこにある家族関係の中での問題が浮き彫りになると、
今抱えている人間関係の悩みとの関係性も理解でき、
解決の糸口を見つけられたりします。
そういった問題を象徴しているような
―「家族関係」からの解放-
がテーマであるともいえる療法です。
ただ、これは問題解決のための1つの「方法」なので、
―何が問題なのか
―どんなことを解決したいのか
という「ファクター」が重要になります。
状況によっては、
ファミリーコンステレーションではないものをやる方が相応しい場合もあるわけです。
例えば、
「家族に私の気持ちをわかってもらいたい」
というような場合には、
ファミリーコンステレーション以前に感情解放などのワークが必要になります。
そしてもちろん、他人の問題は扱えません。
やれるのは「自分自身の問題」だけ。
「家族(例えば父、姉、など)にわからせたい」
「家族を変えたい(変わってほしい)」
というようなことではやれません。
あくまで「今の自分」にどのような問題があり、
今のあるいは過去の家族関係(人間関係)がそこに関係しているであろう、
というケースに対して有効になります。
つまり、
まずは自分の今の問題、
あるいは家族との間にある問題などをクリアにしていかなければ、
ファミリーコンステレーションはできないのです。
そのため、前半の3日間は
自分と家族の関係性を浮き彫りにしていくような作業(ワーク)が中心となりました。
実はこれがなかなかハードなワークで、
やるほどにしまい込まれていたものが出てきたり、気づいたり。。。
かなり揺さぶられる毎日で、かなりへとへとな毎日でした。
合宿形式で、
日常から離れられていることがとても良かったと感じています。
もしこれを日本のセミナールームなどで受けていたら、
日常から完全に離れることはできませんから、かなり辛かったと思うのです。
人ごみにまみれて電車にも乗らないといけないし、
自宅へ戻れば、家族もいるし家事もしなければならない。
そうなると表面化してきた問題にも向き合いきれません。
ヘルシーなお食事と素晴らしい自然に囲まれた気持ちの良い施設で、
しっかりと自分と向き合うことができる環境は、
とてもありがたいものでした。
さて、
実際にファミリーコンステレーションをやると何が起きるのでしょうか。
この療法では、
実際に人を使って、現実の空間にクライアントの心理的な状態を具現化していきます。
(グループワークであることの所以です)
グループの誰かに、クライアント自身を含めた登場人物を割り当てて、
クライアントの感じるままに部屋の中に配置していき、
「クライアントが感じている心理的な位置関係」を具現化していくのです。
すると、役割を担った人は、
不思議なことに「割り当てられた人物として」何かを感じ始めます。
不安な感じがする、
怒りを感じる、
もっと○○(お父さんとかお母さんとか)のそばに行きたい、
あるいは離れたい、
特に何も気にしていない、
などなど…
お互いの感じることを聞きあいながら、
どうしたら問題が解決するか、
どうしたら良い形に変容できるのか、
ファシリテーターが導いていきます。
今回のワークショップでいくつかのケースをやりましたが、
ある意味、登場人物そのものよりも率直に真実を語るような現象があり、とても感心し、感動しました。
ワークが進むうちに、
段々と「本当は何が起きていたのか」が見えてくるのです。
クライアントが今まで思っていた景色とは全く違うものが見えてきます。
クライアント自身も別の人が身代わりとなるため、
クライアントは全体を外側から「眺める」ことができます。
そのことにより客観的に全体を見ることができるだけでなく、
自分自身ではなかなか率直に発言できないことも表現してもらうことができ、
状況がよりクリアになって、
問題解決のための気づきを得やすいのです。
では、
こういったワークによって何が得られるのでしょうか?
もちろん、クライアント以外の人間はその場にいませんので、
自分以外の家族を変えることはできません。
その代わり、
クライアント自身が色々なことに気づくことで、
その後の態度や対応を変えることができたり、
何よりも今まで抱えていた問題に対する見方が変わります。
結果として悩みが悩みでなくなる場合も多いのです。
それだけで、
実際には周りの人にも変化が現れたり、
人間関係が変わっていくという現象も起こります。
私たちは皆、最初の人間関係は「家族」で構成されます。
生まれた時には、周りには家族しかいないのですから当然です。
だからこそ、その後の人生において築いていく人間関係の鋳型となることが多いのです。
それは人間関係だけでなく、自分自身の行動パターンにも影響を及ぼします。
刷り込まれた行動パターンによって本質的には同じようなことを繰り返してしまっている、
ということはよくあることなのです。
今抱えている自分の問題が、
まさか幼少期の家族の中で繰り広げられていた人間関係で刷り込まれた思い込みから来ていた、
なんて、びっくりするかもしれませんが、
そういうことがたくさんあるのです。
このようなワークに取り組むことでどのように変容できるのか、
悩みを抱えている人(クライアント)自身がどのようにそれを乗り越えていけるのか、
自分自身のことだけでなく、色んなケースからたくさんの学びを得ることができました。
今回学んだことを、今後のセッションに活かしていきたいと思っています。
最後になりますが、
導いてくださった先生方、支えてくださったグループのメンバーの皆さんにとても感謝しています。
本当にありがとうございました。
6日間のワークショップ中で、
メンバーみんながそれぞれ日々変容していくのを目の当たりにし、
お互いをサポートし合いながら学び、成長できたことを、とても幸せに思います。
「私たちは、家族がいなければ今ここにいることはない。
美しい蓮の花も、泥水がなければ咲かない。
私たちを蓮の花と例えれば、家族は泥水。
泥水から芽を出し、美しい花を咲かせましょう」
ガーラ先生のこの言葉が、今回のワークショップの象徴的な言葉だったと感じています。
私たちの貴重な経験と気づきが、
泥の土の中から芽を出し、
素敵な蓮の花へと変容していきますように。
