ポリアンナシンドローム
※この記事は過去ブログでアップしたものを一部訂正したものです。(初稿2011年8月)
『ポリアンナシンドローム』という言葉を知っていますか?
ポリアンナイズム(Pollyannaism)とも呼ばれる心理学用語の一つですが、
昔アニメにもなったE.ポーターの小説「少女パレアナ」に由来してつけられた言葉だそうです。
(アニメでは、ハウス世界名作劇場「愛少女ポリアンナ物語」として放映されました)
wikipediaを覗いてみると...
『現実逃避の一種で、楽天主義の負の側面を表すもの』であり、
「直面した問題の中に含まれる(微細な)良い部分だけを見て自己満足し、
問題の解決に至らないこと」
「常に現状より悪い状況を想定して、そうなっていないことに満足し、
上を見ようとしないこと」
などを指す。
と書かれています。
この用語の元になっている少女ポリアンナは、不幸な境遇にもかかわらず、それを嘆くことなくポジティブな側面を見て積極的に物事を捉えていく性格の持ち主で、その生き方に周りの人が影響され、やがては幸せになっていく、という少女の成長物語が書かれた小説ですが、
ポリアンナシンドロームというのは、その「前向きさ」「ポジティブさ」による負の側面が
病的なポジティブさを生み出してしまった場合を指す言葉として使われています。
ポジティブも度を越したり、見方を間違えれば良い事とはならず、
その姿勢はバランスを崩した物事の見方によって現れ、
結果として病的な状態となっている状況を示している言葉です。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
ポジティブ、って、良い言葉ですよね。本当は...
特にスピリチュアルなことやヒーリングを学んでいくと、
「物事をポジティブに捉えることが大切」ということを聞くようになります。
ポジティブな面を見てポジティブに生きれば幸せになれる、自分の状態がよくなる、より良い人生を歩めるということで、
「ポジティブなことは良い事」と捉えられています。
もちろんそれはその通りです。
でも。
その捉え方、やり方によっては、
誰でも「ポリアンナシンドローム」の状態に陥ってしまう可能性があります。
特にスピリチュアルやヒーリングを学んでいる人たちは、
「ポジティブなことが良いことであり、ネガティブなことはよくない事」
と捉えている傾向があるために、そこにこだわってしまい、ありのままを客観的に見つめることができず、「都合の良い」ポジティブでい続けてしまうという現象に陥りがちな面を持っています。
では、本当のポジティブとは、どのようなものなのでしょうか。
色々な考え方があると思いますが、私としては
「より良くなるために」、つまり、本当の意味でポジティブな状態を引き寄せるために、
きちんと問題点を捉え、その解決策を見出し、それに向かって取り組めることであり、
そして問題点というのは「解決すべき点」であって、それ自体を「ネガティブ」と捉えて否定しすぎず、きちんと解決に向かって積極的な姿勢を持てることである、
と感じています。
何かうまくいかないことがあったとして、
うまくいかなかったことを「見る」こと自体はネガティブでも何でもありません。
例えば、自転車に乗れない人がいたとして、
「自転車に乗れない」ということ自体は、ただの事実であり、
その人を否定していることにはなりません。
あるいは、靴紐がほどけている人がそれを踏んで転んだとします。
「靴紐がほどけているから転んだんだよ」と指摘するのは、
ネガティブでも何でもありません。
これらはただの「事実」です。
言われた人は「あ、そうだね」とそれを認めて、靴紐を結べば良いのです。
自転車に乗れようが乗れまいが、それ自体には何も意味はなく、
もし上手に自転車に乗れるようになりたいのであれば、
練習して乗り方を学べば良いだけです。
それを言った人は事実を述べただけでそれ以上の感情は乗せていないのに、
「ネガティブなことを言われた」
「私を侮辱した」
「私を否定した」
と感じてしまうのだとすれば、
言われた方が実際にはネガティブな物事の捉え方しかできていない、
ありのままを見つめることができていないということなのです。
つまり、相手がネガティブなのではなく、自分がそうに捉えてしまっているだけなのです。
もちろん、いじわるでそれを言う人もいるかもしれません。
でもそうであったとしても、自分自身がそれを否定的に捉えていなければ、
「あ、そうだね、ありがとう」と言える筈なのです。
意地悪で言われたなんて思うことすらありません。
(相手が投げてきた「ネガティブ」な感情はそのままその人に戻っていくだけです)
ところがそれ自体を「ネガティブだ」として、
見ることをやめてしまい、
「良かった」ことだけを探したり、
むりやり「よかった」ことにしてしまう、という現象を良く見ます。
「自転車に乗れない」ということ(事実)を言われただけで、
「責められた」「否定された」「ネガティブなことばかりを見られた」と捉えてしまう、
という状況です。
でも、目標を達成するためには自転車を上手に乗りこなすことが必要だったと考えてみてください。
自転車に乗れない、あるいはよろよろとしか運転できないとなれば、そこをまず改善する(上手に乗れるようになる)ことが必要になりますね。
当たり前のことです。
でも、それを指摘されること自体を「ネガティブだ」と捉え、
「一生懸命やっているからいいのだ」とか、
「それでも乗れているからいいのだ」とか、
「なんとかたどり着いたからいいのだ」と言い、
「せっかく一生懸命自転車に乗っているのに、そんなことを言うから失敗するのだ。
そういうことを言う事自体がネガティブだ
なんてことを言ってしまう場合があります。
残念ですが、そんなことでは目標は達成できるどころか、改善策も見えてきません。
厳しい言い方になりますがこういう状況に陥っている場合、
「言い訳」だけはとても上手になっていて、問題点をすり替えてしまっているのです。
このような視点でいる限り、
実際にはより良い方向に変えていくことはできません。
やらなければならないことをしないで目標だけは高々と掲げているのは、
ポジティブでもなんでもなく、
単に自分の状況に合った目標を定めることすらできず、必要な努力をすることすらしていないということです。
でも、残念ですがこういう人ほど自分を大きく見せるのは上手で、
まるでものすごく努力をしているかのように振舞ってしまっています。
つまり、以前お話したように、
そうすることで「自分で自分を騙して」いるのです。
では、このようになってしまうのは何故なのでしょうか。
それは、問題点を「ネガティブなこと」と捉えてしまっている姿勢が根底にあるからなのです。
うまくいかないことがあった時、
失敗してしまった時、
それを自分の「欠点」と捉えたり、自分のことを「ダメ」であると思ったり、
できないのは「負け」であると考えてしまう姿勢が根底にあると、
客観的に物事を捉えられなくなります。
そこを見ること=自分を否定すること という考え方になってしまうがために、見ないようにしてしまい、
「ここが良かったから大丈夫」と言い聞かせる、という状態になります。
あるいは問題解決をするだけのエネルギーがないために、「見過ごしていたい、なかったことにしたい
という思いが、そういう態度を生み出す場合もあります。
このような状態の場合、
問題点を指摘されただけで「それはネガティブだ」という考え方になります。
「それはネガティブなところを見ている、もっとポジティブなところを見るべきだ」となります。
なんだかもっともそうな言い分ですよね...(苦笑)
だから周りだけでなく自分自身も上手に騙すことができます。
つまりここに大きなからくりがあるわけです。
でも、実際にはこれは本当のポジティブではありません。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
もし、たくさんの悩みを抱えて、自己卑下でいっぱいになっている人がやってきた時には、
「自分の良い所を探して、できていることを数えてみましょう」というお話をします。
なぜなら、その人は自分の全てを否定してしまっていて、
できていることすら認められず、ありのままの自分の状況を認められていないからです。
ですから、「まずはできていること、良いところを認めることから始めましょう」というお話をします。
こういう状況から見れば、今日のお話の状態は「ポジティブでいいじゃないか」と感じられるかもしれません。
でも、ポリアンナシンドロームの状態は、振れ方が逆になっているだけで、実際には同じ問題を抱えているのです。
一番根底にある状態は
「事実を受け入れられずに自分自身のありのままを認められない」という状況だからです。
これはどちらも同じなのです。
「ポジティブさ」でごまかしてしまっているという点では、より複雑で、自分や周りをだましやすい状態になっているといえるかもしれません。
「ポジティブは良い事」という前提があるために、ポジティブさでごまかしてしまい、
まやかしとしてそれを使ってしまっている状態がそこにはあるのです。
最近は、
「ポジティブ=良い事、OKなこと
「ネガティブ=よくない事、ダメなこと
という印象の強い言葉になっているのを感じることが増えてきているため、
私は「ポジティブ」「ネガティブ」という言い方があまり好きではありません。
実際にはそれすらも手放し、ありのままを見てその状態を受け入れた上で、
その先に何をしていくべきなのかを見極められること、
そして問題をきちんと片付けてから次のステップにいけるように取り組んでいけることこそが、本当のポジティブに繋がることであると感じています。
ただ、これは実際にはとてもエネルギーの必要な行為です。
ありのままを見つめるには、それをするだけの強さが必要だからです。
だからこそ、自分が弱ってしまうと「ポリアンナシンドローム」のようなまやかしのポジティブな状態を作り出してしまうのです。
自分がこういう状態に陥っているかどうかを見極めるのはなかなか難しいことではありますが、こういう視点を持っているだけで、物事の見方はずいぶんと違ってきます。
見極めていける強さを持てるよう、
自分の周りに作ってしまった不要な垣根を取り除いていきましょう。
余計なエゴやプライドをそぎ落としていくことができれば、
何かを見たときに「ネガティブだ」と捉えること自体を手放していくことができ、
自分のありのままを認め、
前に進むために本当に必要なことをやっていくことができることでしょう。
ホメオパシーでもキネシオロジーでも、
「原因を見つめ、そこを解決していくこと」が本当の解決への道、
癒しへの道であると言われています。
そうであれば、「原因を見つめること」自体ををネガティブだと考えてしまう状態から抜け出すことこそが、本当にポジティブな状況を作り出すことに繋がる唯一の道であるといえるかもしれません。