絶望名人(フランツ・カフカの紹介)
(2022年6月 ブログ投稿)
フランツ・カフカ(1883-1924)という小説家をご存じでしょうか?
先日、カフカについての面白い本を読んだので、
今回は「超絶ネガティブ名人」と呼ばれるカフカについてご紹介します。
カフカについては、
代表作である『変身』という物語をご存じの方は多いかもしれません。
主人公がある日突然巨大な「害虫」になってしまい、
家族から疎まれるというお話です。
まるでカフカそのものを象徴したような存在の主人公なのですが、
今回はカフカの小説についてではなく、
カフカという人物がどんな人だったのか、どんな人生だったのか、
ということについて、
興味深いので注目してみたいと思います。
フランツ・カフカ (Wikipediaより)
このカフカ、
けっこうイケメンで、真面目、仕事もできる人でした。
でもとにかく「ネガティブ思考が止まらない」。
とにかく後ろ向き(笑)
何が起きても全力で後ろ向き(笑)
誰が何と言おうと。
結局はそれによって病気になって亡くなったという人です。
私が読んだのはこちら↓
漫画版もある(笑)
なかなかシュールな絵で、カフカの絶望感が伝わってくる絵面です。
「いかにして思考をポジティブに変換するか」
みたいなお話をしているのに、
いったい何故こんなネガティブ名人を取り上げるのだろう?
と思うかもしれません。
でも、
カフカからは多くのことを学べると感じています。
一つは、
ネガティブ思考に支配されて生きた人の、代表的な「例」であるということ。
こういう思考にすっかり囚われて生きていらどうなってしまうのか、
ということを実例として学ぶことができます。
そして「下には下がいるもんだなあ」と、ある意味感心もできると思います(笑)
いくらポジティブになろうと思っても、
「それができないから悩んでいるのに…」
と思うことはありますよね。
そういう時にはカフカのような人に注目してみるのも良いと思うのです。
カフカは「ネガティブ思考の鑑」のような人で、
「そこまで…?」と笑ってしまうようなエピソードが満載です。
彼はなにごとに対しても絶望します。
とにかく常に絶望します。
本を読むといかに彼が絶望しながら生きていたか、
というのが良くわかります。
(でもこの本は決して暗い本ではないし、読みやすい本ですからご安心ください)
笑ってしまうほどの絶望なのです。
「私、いくらなんでもそこまでじゃないわ(笑)」
と思えるかもしれませんし、
「ここまで行っちゃうとこうなるのか…」
と納得できるかもしれません。
(そこそこゼツボー中)
そしてもう一つは、
このカフカという人を見ていくと、
・思考が病気を作り出す
・病気は「役に立つ」
ということが良く理解できると思うのです。
カフカは結核で亡くなります。
ネガティブ思考満載だったにもかかわらず、
結核になった彼は「絶望しなかった」のです。
「僕にとってはどうしても必要な武器を手に入れた」
と、むしろ喜びます(笑)
「これでやっと仕事に行かなくてよくなる」
「これで自室にこもっていられる」
「これで結婚しないで済む」
「これでようやく僕は安心して眠れる」
彼は病気が彼にいろいろなものをもたらしてくれることをよく知っていて、
やっと手にできたそれを喜ぶのです。
「病気が最大の武器になる」
「病気は本当に便利な言い訳になる」
これを全力で行って、
その利益を余すところなく享受しようとした人、
それがカフカです。
そこまでとことんできるって、ある意味ものすごい意志の強さです。
(褒めてるんですよ(笑))
カフカの名言には有名なものがたくさんあります。
◆将来に向かって歩くことは、ぼくにはできません。
将来に向かって躓くこと、これはできます。
一番うまくできるのは、倒れたままでいることです。
◆ぼくは一人で部屋にいなければならない。
床の上に寝ていればベッドから落ちることがないのと同じように、
一人でいれば何事も起こらない。
◆ぼくはただ自分のことばかり心配していました。
ありとあらゆることを心配していました。
例えば健康について。
ふとしたことから消化不良、脱毛、背骨の歪みなどが気にかかります。
その心配がだんだんふくれあがっていって、
最後には本当の病気にかかってしまうのです。
カフカは自分が自分の思考によってどうなっていくのか、
ということを理解していたのです。
そしてようやくそれを手にした時、ほっとします。
そんな絶望満載のカフカですが、
彼の良いところは、
自分に対してはネガティブ思考満載なのに、
他人の良いところを見つけるのはとても上手で、
しかもそれを素直に認めてほめるのもすごく上手、
というところです。
自分についてのネガティブな思考に囚われていると、
人を羨んだり嫉妬したりしてしまいがちですが、
カフカにはそういうところはありません。
他人に対してはとてもポジティブできれいな視点を持っているのです。
つねに後ろ向きの発言を聞いていると、
聞いている方が嫌になってしまうなんていうことはありますが、
周りの人たちが彼を好きだったのは、
そんなところがあったからかもしれません。
もしも本当に人生に絶望していて、
ネガティブな思考から脱却することができない、
と悩んでいるならば、
無理にそこから抜け出そうとするよりも、
カフカの本を読んでみたり、
カフカの人生に寄り添ってみることで、
なにかを得られるかもしれません。
自分が彼の人生に寄り添ってみているようでいて、
実際にはカフカがあなたに寄り添ってくれることでしょう。
力技で抜け出そうとするのではなく、
今の状態を味わうだけ味わってみるのも、
自分に寄り添う方法なのです。